Model D Wireless
スペック
| 重量 | 69 g |
|---|---|
| 全長 | 130 mm |
| 幅 | 68 mm |
| 高さ | 42 mm |
| センサー | BAMF |
| DPI範囲 | 400 – 19,000 |
| ポーリングレート | 125 / 250 / 500 / 1000 Hz |
| ボタン数 | 6 |
| 接続方式 | wireless_2.4ghz, wired |
| バッテリー | 71 時間 |
| 形状 | ergonomic right |
| RGB | あり |
| ソール素材 | PTFE |
| 発売年 | 2021 |
Glorious Model D Wireless と他のマウスを比較
概要
Glorious Model D Wirelessは、Zowie ECシリーズの形状を「軽量・ワイヤレス・低価格」で再構成したエルゴノミックマウスだ。2021年発売。69gのハニカムシェルにBAMFセンサーを搭載し、2.4GHzワイヤレスと有線USBの両接続に対応する。価格は¥10,800。
EC形状クローンというカテゴリには多くの競合がひしめいているが、Model D Wirelessの立ち位置は「EC形状を最も手頃に、かつワイヤレスで試せる入口」だ。2021年時点では画期的なバリューだったが、2025年現在は競合の進化が著しい。Pulsar Xlite V3やRazer DeathAdder V3 HyperSpeedといった新世代が、センサー性能やビルドクオリティで上回る製品を投入している。それでもModel D Wirelessは、¥10,800という価格と69gの軽さで、予算を重視するプレイヤーにとって依然として検討に値する選択肢であり続けている。
デザイン・ビルドクオリティ
Model D Wirelessの外観を一目で特徴づけるのは、トップシェル全面に広がるハニカム(六角形穴あき)パターンだ。Gloriousが「軽量ゲーミングマウスの民主化」を掲げて打ち出したデザイン言語であり、Model O/Dシリーズの共通アイデンティティとなっている。
ハニカムシェルは軽量化の手段として合理的だ。69gという重量はエルゴノミック形状のワイヤレスマウスとしては十分に軽い。有線のZowie EC2-C(73g)よりも軽く、かぶせ持ちユーザーの手首疲労を軽減する。ただしハニカムには実用上のデメリットがある。穴の内部にホコリや皮脂が蓄積し、定期的な清掃が必要になる。綿棒やエアダスターでの手入れが習慣にならないと、数ヶ月で衛生面が気になってくる。
シェル素材はABSプラスチックで、表面はマット仕上げ。手汗には比較的強いが、長時間の使用で若干のテカリが出る個体もある。2021年の製品としてはビルドクオリティは価格相応だ。シェルを強く押すとわずかにたわみを感じる箇所がある——構造的に問題があるレベルではないが、ソリッドシェルの最新マウスに触れた後では気になるかもしれない。
底面には大型PTFEソールが配置されている。USB-Cポートは前面に位置し、有線接続時のケーブル取り回しは自然だ。2.4GHzドングルはUSB-A延長アダプター付きで同梱される。ドングルの本体収納スペースは設けられていないため、持ち運び時はドングルの紛失に注意が必要だ。
RGB照明はシェル側面のGloriousロゴ部分に搭載されており、ハニカムの穴から光が漏れる演出がある。ソフトウェアでオフにも設定可能だが、バッテリー持続時間を最大化するならオフ推奨だ。カラーバリエーションはマットブラックとマットホワイトの2色展開。
全体として、Model D Wirelessのビルドクオリティは「¥10,800なら納得できる」水準にある。¥15,000以上の製品——Pulsar Xlite V3 WirelessやRazer DeathAdder V3 HyperSpeed——と横に並べると質感の差は感じるが、初めてのワイヤレスエルゴノミックとしてはコストパフォーマンスで十分にカバーできる範囲だ。
形状・グリップ互換性
Model D WirelessはZowie ECシリーズへのオマージュを公言している形状だ。サイズは全長130.0mm、幅68.0mm、高さ42.0mm。Zowie EC1-C(128.8×69.8×44.4mm)とEC2-C(122.9×64.6×42.5mm)の中間——EC1.5と呼ばれることもある——に位置するサイズ感で、EC1の握り心地に近いが全長がわずかに長く、高さがわずかに低い。
右手専用のエルゴノミクス形状で、左側面の親指溝、右側面の薬指/小指サポート、後方に配置されたハンプという古典的な三要素を備える。ハンプの頂点位置はECシリーズとほぼ同じ後方寄りで、かぶせ持ちの手のひら付け根をしっかり受け止める設計だ。
かぶせ持ち(手の長さ19.0〜21.5cm、手幅9.5〜11.0cm) — 最適
Model D Wirelessが最も真価を発揮するグリップだ。130mmの全長がEC1よりわずかに長いため、手の長さ19cm以上の中〜大サイズの手にフィットする。42mmの高さは手のひら全体を穏やかに支え、68mmの幅は指を自然な角度に開いた状態で窮屈さがない。
EC1-Cとの比較では、44.4mm vs 42.0mmの高さの差がグリップ感覚に影響する。Model D Wirelessの方がハンプがやや低いため、手のひらへの圧迫感が少なく、長時間セッションでの快適性に優れる。一方、EC1-Cの高いハンプは手のひらへの密着度が高く、固定感を好むプレイヤーにはEC1-Cが上回る。
EC2-C(122.9mm全長)と比べると、Model D Wirelessは7mm長い。手の長さ18.5cm未満のユーザーには全長が持て余す感覚になるため、EC2-Cの方が適している。
69gという重量はかぶせ持ちとの相性が特に良い。手のひら全体がマウスに乗るため、軽さがそのまま手首の負担軽減につながる。スロートラッキングでのスムーズな追従が容易で、低感度設定での長距離フリックでも腕が疲れにくい。
つかみ持ち(手の長さ18.0〜20.0cm) — 良好
手のひら付け根をハンプに当てつつ、指をアーチ状に立てるリラックスしたつかみ持ちであれば快適に使える。42mmの高さがEC1-Cより2mm低い分、手のひらとシェルの間に適度な空間が生まれ、指先でのマイクロコントロールがしやすい。
ハニカムシェルがつかみ持ちに影響する点がひとつある。指を立てた状態でシェルに触れると、穴のエッジがわずかに感触として伝わる。気にならないプレイヤーが大半だが、グリップテープやリザードスキンでの対処を好む人もいる。
アグレッシブなつかみ持ち——手のひらを完全に浮かせて指先と手のひら付け根だけで保持するスタイル——には68mmの幅が広すぎる。このグリップスタイルなら、左右対称で幅の狭いマウス(Pulsar X2 Wireless、Razer Viper V3 Proなど)の方が制御しやすい。
つまみ持ち(手の長さ17.5〜19.0cm) — やや不向き
130mmの全長と42mmの高さは、指先だけでの精密操作に最適化された寸法ではない。つまみ持ちプレイヤーがEC形状を選ぶケースは少ないが、試すのであれば手の長さ18.5cm以上が必要だ。69gの軽さがつまみ持ちの操作感を多少は助けるものの、本来の適性は小型・低背のマウスにある。EC2-C(42.5mm高さだが全長が短い)ですら、つまみ持ちには大きいという声が多い。
ハニカムとグリップの関係
Model D Wirelessを選ぶ際に無視できない要素が、ハニカムシェルのグリップ感への影響だ。かぶせ持ちでは手のひらが広い面積でシェルに接するため、穴は気にならない。つかみ持ちでは指先の接触面が限られるため、穴のエッジが意識される場面がある。トリフィロフォビア(集合体恐怖症)の傾向がある人は実物を試してから判断すべきだ。
センサー性能
BAMFセンサーはGloriousとPixArtの協業で開発された光学センサーで、DPI範囲400〜19,000、最大トラッキング速度は400 IPS。2021年時点では十分な性能だったが、2025年の基準では1世代前のスペックとなる。
競技で多用されるDPI帯(400〜1600)での基本的なトラッキング精度は問題ない。カーソルの追従は安定しており、低DPIでのピクセルスキップや高速フリック時の飛びも、通常のゲームプレイの範囲内では発生しない。しかし、最新の3950系や3395系センサーと比較すると、高速スワイプ時のスムージング特性やリフトオフディスタンスの精度に差が出る場面がある。
リフトオフディスタンスは初期値で約1.5mm。ソフトウェアで調整可能だが、最新センサーが0.5〜0.8mmまで詰められるのに対し、BAMFは最小でも約1.0mmが実用限界だ。マウスを頻繁に持ち上げるローセンシプレイヤーにとって、この差は体感できるレベルにある。
モーションレイテンシは約5.0ms。2021年のワイヤレスマウスとしては標準的だが、Razer Focus Pro 30K(約4.0ms)やPixArt PAW3950(約3.5ms)と比べると遅れが見える。カジュアルなゲームプレイでは気にならないが、1msの差を重要視するハイレベルなプレイヤーは最新センサー搭載モデルを検討した方がよい。
スイッチ・ボタン
メインスイッチはKailh GM 2.0(20Mクリック耐久)を搭載。押下荷重は約50gfで、クリック感は軽すぎず重すぎない標準的なフィーリングだ。ストロークの歯切れは良好で、連打性能も十分。
ただし20Mクリック耐久のスイッチは、現行の80M〜100M耐久スイッチと比較すると寿命面で不安が残る。使用頻度にもよるが、1〜2年でダブルクリック症状が出たという報告がコミュニティで散見される。Kailh GM 2.0は機械式スイッチのため、接点の酸化によるダブルクリックは原理的に起こりうる。光学式スイッチを搭載する最新マウス(Razer Optical Gen-3など)はこの問題を構造的に回避しており、長期使用の信頼性では一歩譲る。
サイドボタン2個は左側面に配置され、適度なクリック感と明確なフィードバックがある。ホイールはステップ感のあるタクタイル型で、ゲーム中の武器切り替えに使いやすい。ホイールクリックの荷重はやや重めだが、誤爆を防ぐ観点では適切だ。
接続性・バッテリー
接続方式は2.4GHzワイヤレスとUSB-C有線のデュアルモード。Bluetooth非搭載のため、仕事用PCとのマルチデバイス切り替えには不向きだ。2.4GHz接続のポーリングレートは最大1000Hzで、競技水準の応答速度を確保している。
バッテリー寿命は公称71時間(RGB照明オフ時)。実測ではRGB全灯で約50時間、オフで約65〜70時間程度だ。毎日3〜4時間のゲームプレイであれば、RGB照明オフで約2〜3週間に1回の充電で済む。USB-C充電に対応しており、充電しながらの有線プレイも可能だ。
充電時間はゼロから満充電まで約2時間。有線モードへの切り替えは自動的に行われるため、バッテリー切れの最中でもケーブルを挿すだけでプレイを中断せずに続行できる。この点はRazer DeathAdder V3 HyperSpeed(USB-C充電非対応、電池交換式)に対する明確なアドバンテージだ。
2.4GHzの無線安定性は通常の環境であれば問題ない。ただし、Wi-Fiルーターや他の2.4GHz機器が密集する環境では、付属のUSB延長アダプターでドングルをマウスパッドの近くに配置することを推奨する。
マウスソール・滑り
底面にはGlorious純正のPTFE(G-Skates)ソールが4枚配置されている。厚さは約0.8mmで、パッド面からのクリアランスは十分。初期状態でのグライドは滑らかだが、純正ソールは硬めの感触で、布パッド上ではやや「サラサラ」とした摩擦を感じる。
CorepadやTiger Arcなどサードパーティ製の交換ソールが豊富に出回っている。Model D Wirelessの人気が高かった時期に多くの互換品が製造されたため、入手性は良好だ。純正ソールに不満があれば交換でグライド感を大きく変えられる。
ソフトウェア
Glorious Coreで全設定をカスタマイズ可能——DPIステージ(最大6段階)、ポーリングレート、ボタンリマッピング、RGB照明パターン、リフトオフディスタンス調整、デバウンスタイム設定。オンボードメモリに設定を保存でき、Glorious Core未インストールの環境でもカスタム設定が維持される。
Glorious Coreは過去にUIの不安定さやアップデートの遅さが指摘されていたが、2024年以降のバージョンでは大幅に改善されている。Razer SynapseやLogitech G HUBと比べると機能面では簡素だが、必要な設定はすべて揃っており、ゲーミングマウスの設定ソフトとしては過不足ない。
プロ選手の使用状況
Model D Wirelessを競技で使用するプロ選手は、現時点のデータベースには登録されていない。Gloriousブランドの中では、左右対称のModel Oシリーズが一部のプロに採用された実績があるが、エルゴノミック形状のModel Dシリーズはプロシーンでの採用が限定的だ。
この背景にはいくつかの要因がある。まず、Gloriousはゲーミングデバイス市場ではRazer・Logitech・Zowieと比較してスポンサーシップ規模が小さく、トップティアのプロチームとの契約が少ない。スポンサード選手は契約ブランドの製品を使う義務があるため、Gloriousの露出は必然的に限られる。
次に、EC形状を求めるプロ選手の多くは本家のZowie ECシリーズかRazer DeathAdderシリーズを選ぶ傾向がある。長年の実績とトーナメントでの動作保証——特にZowieのドライバーレス設計は大会環境での信頼性が極めて高い——が選定の決め手となる。
しかし、形状の品質自体は競技に耐えうるものだ。Model D WirelessのEC風形状は、EC1-CやEC2-Cと並べても遜色ないフィット感を提供する。全メジャーLAN大会で使用可能であり、レギュレーション上の問題は一切ない。
コミュニティでは「プロが使っていない=性能が低い」という短絡的な評価がときに見られるが、Model D Wirelessの場合はマーケティング戦略とスポンサーシップの問題であり、マウスそのものの競技適性とは別の話だ。¥10,800でEC形状のワイヤレスを手に入れて、自分の手と感度に合うかを試す——という使い方では、プロの採用実績は本質的な問題にならない。
ランク帯で言えば、カジュアルからダイヤモンド〜イモータルクラスまでのプレイヤーには十分な性能と形状を備えている。プロシーンに直結するRadiant以上を目指す段階で、最新センサーと低レイテンシを求めて上位モデルに移行するのが合理的なステップだろう。
よくある評価と不満
高評価ポイント:
- ¥10,800でワイヤレスEC形状を試せる手頃さ
- 69gはエルゴノミック形状としては十分に軽い
- かぶせ持ちとの高い親和性——EC1に近い安心感
- USB-C充電+有線デュアルモードの利便性
- PTFEソールの交換パーツが豊富に出回っている
不満として挙がる点:
- ハニカムシェルにホコリ・皮脂が溜まりやすく清掃が手間
- BAMFセンサーは最新モデルと比べてリフトオフ距離やレイテンシで見劣りする
- 20Mクリック耐久のKailh GM 2.0スイッチは長期信頼性に不安
- 最新の3395系・3950系搭載マウスに比べるとモーション遅延が大きい
- Bluetooth非搭載で仕事兼用には不便
総評・購入ガイド
買うべき人: EC形状のワイヤレスエルゴノミックを¥10,800以下で試したいプレイヤー。手の長さ19.0〜21.5cmのかぶせ持ちであれば、Model D Wirelessは自然なフィット感を69gの軽さで提供してくれる。初めてのワイヤレスゲーミングマウスとして、あるいはEC形状が自分の手に合うかを確認する「お試し」としてのバリューは高い。
見送るべきケース: 最新のセンサー性能とビルドクオリティを求めるなら、Pulsar Xlite V3 Wireless(約¥13,000)やRazer DeathAdder V3 HyperSpeed(約¥11,000)の方が満足度は高い。ハニカムシェルの清掃が面倒だと感じるなら、ソリッドシェルのモデルを選ぶべきだ。すでにZowie EC2-CやEC1-Cを持っているプレイヤーが「ワイヤレス化」を目的に買い替えるなら、センサーの世代差も考慮して最新モデルを検討した方がよい。
代替候補:
- Razer DeathAdder V3 HyperSpeed(約¥11,000)— ソリッドシェル・71g・Focus X 26K・300時間バッテリー
- Pulsar Xlite V3 Wireless(約¥13,000)— 55g超軽量エルゴノミック・PAW3395
- Zowie EC2-C(約¥9,500)— 有線73g・EC形状の本家・ドライバーレス
価格評価: ¥10,800は2021年の発売時には「ワイヤレスEC形状がこの値段で買えるのか」という驚きがあった。2025年現在、競合の価格が下がり性能が上がった結果、Model D Wirelessのバリューは相対的に縮小している。しかし¥10,800という絶対額はゲーミングマウスの入門価格として依然として魅力的であり、EC形状への最初の一歩としては十分に推奨できる。